「反戦――来るべき戦争に抗うために」展

会期|2014年9月25日(木)-9月29日(月)
会場|SNOW Contemporary

土屋誠一氏の呼びかけによる展覧会「反戦――来るべき戦争に抗うために」展に参加します。

展覧会呼びかけ文
 2014年7月1日、集団的自衛権の行使容認が閣議決定されました。例えば、近くは、2003年からの自衛隊のイラク派兵など、憲法9条に明白に違反する政策がなされてきたのは事実です。しかし、今回の閣議決定は、日本政府が自発的に「戦争参加が可能な国家」であることを宣言したものであると理解できます。このことは、戦後日本においてまがりなりにも順守されてきた憲法9条において維持されてきた、平和憲法への決定的な裏切りです。日本の自衛力に関しては、様々な立場があり得るでしょうが、今回の熟議を経ないままの強引な閣議決定は、民主主義的な観点から言っても容認すべきではありません。
 このような現状において、美術になにが可能だろうか。美術における何らかの表現行為が、直接的に政治に効力を持つことはほとんどあり得ないだろうし、美術とは必ずしも、政治に対するアジテーションのためだけに存在するものではないでしょう。では、美術にかかわる人間は、自らの立場において何もしなくてもいいのか。勿論、時局に対して拙速な行動を取るべきではないというのもひとつの態度表明ではありますが、このタイミングにおいてなんらかのアクションを起こさないことは、未来の遺恨になると私は考えます。
 そこで、閣議決定の報道がなされた直後、私は突発的に、今回の閣議決定に反対するアクションを起こすべきではなかろうかと考えました。何も、作品やステートメントそれ自体によって「反戦」のメッセージを発する必要はありません。美術がある一定の自律性を持った表現であるとするならば、これまで積み重ねてきた主張を曲げ、反戦のメッセージを作品やステートメントに込める必要はないと考えます。ただ一点求められることは、展示という発表行為で個々の自立した表現者が、名前を連ねることだと考えます。もちろん、美術関係者の名前を並べて意見広告を出すだけでもいいし、あるいはネット上でキャンペーンを打つだけでもいいのかもしれません。しかし、美術に携わる私たちが可能な方法論には、「展覧会」という、特定の場所を一定期間占め、そこで自らの表現行為を発信するという、ほかの芸術ジャンルにはない手段があります。ゆえに、意見広告やデモ行動や署名活動(もちろん、それらを否定するものではないにせよ)ではなく、あえて「展覧会」として世に問うべきなのではないでしょうか。
 この展覧会は、アンデパンダン形式で開催します。展覧会場は東京都内某所で、会期は9月25日(木)から29日(月)です。最初の呼びかけをTwitter上で閣議決定直後に行ったため、既に参加賛同者は集まっていますが、私のこの呼びかけ文を読んで、「降りる」という選択をとる人もいるかもしれません。それもひとつの態度表明でしょうから、そのことを批判したりはしません。
 ともあれ、ノンポリの美術関係者であろうと、今回の集団的自衛権行使容認については、展覧会というかたちで反対の態度をきちんと表明すべきではなかろうか。私はそう考えます。この展覧会は、形式的には私が実行委員長を務めますが、展覧会自体は参加者全員が実行委員として主体的に責任をシェアすることが重要だと考えています。私は今回、一切のキュレーションを行いません。ゆえに、主体的に展覧会に関わる覚悟がないならば、参加は見合わせたほうがいいでしょう。このような展覧会を本気で組織する以上、参加賛同者にも相応の覚悟を持っていただきたい。お友達同士のグループ展気分や、単なるノリで参加するのだったら、それは控えていただきたい。ただ一点、集団的自衛権行使容認に反対し、日本が「戦争参加が可能な国家」となることに反対し、将来的に決して無いとは言えない戦争への突入に対し「反戦」という意思を共有できるならば、参加してください。このことは、日本から現われる未来の美術家や美術に携わる人々に希望を託すことになるはずですし、より広く、将来の子どもや若者たちに希望をつなぐことになると確信しています。
 知ってのとおり、太平洋戦争期には、美術家だけにとどまらず多くの芸術家が、総力戦のうちに動員されていきました。美術も社会と無関係ではない以上、時局の変数に対応し、変容を迫られるものではあります。しかし他方では、表現の自律的な領域を確保しておかないと、個々の表現は単なる社会の反映に過ぎなくなってしまいます。一見いまでは与件として私たちに保障されているかのように見える「表現の自由」など、知らぬ間に奪い取られているかもしれない可能性が潜在している。そして現在、そのような危機的状況は、既に足元にまで迫ってきていると私は考えます。
 私は自らをノンポリと自認していますし、「平和な戦後」しか知らない世代においては、ある程度そのような「ノンポリ」さは共有されていると思います。しかし、自らに与えられた「ノンポリ」さに甘んじて、「華麗にスルー」している場合ではない局面に至っている。今こそ行動の時です。
 この呼びかけ文に賛同し、参加を表明する美術関係者は何らかの方法で私に連絡を下さい。この呼びかけで集まった参加者に対しては、私は実行委員長として、展覧会の会場の準備、広報活動の実施について責任を負って遂行することを約束します。

2014年7月31日
「反戦――来るべき戦争に抗うために」展 展覧会実行委員長 土屋誠一