記述の技術 Art of Description

出品作家|小森はるか+瀬尾夏美、佐々木友輔、髙橋耕平
会場|2016年5月21日(土)-6月12日(日)
時間|平日 13:00-20:00/土日祝 12:30-20:00(会期中無休)
会場|ARTZONE
企画|林田新(京都造形芸術大学専任講師)、櫻井拓(編集者)
   京都造形芸術大学プロデュース学科
http://artzone.jp/?p=2475

アーティストトーク
日時|5月21日(土)18:00-20:00
場所|MEDIA SHOP
入場料|500円(京都造形芸術大学の生徒は学生証提示で無料)

展覧会スタッフ
山崎秀隆、市下純子、島田真親(アートプロデュース学科3回生)
河野彩子、呉屋直、齋藤智美、森脇盟子、山崎汐莉香(同学科2回生)

展覧会趣旨|

かつて言葉や絵画によって行われてきた出来事の記録は、ある時から映画や写真などの映像メディアが担うようになってきました。それは劇映画や芸術写真と対立するものとしてドキュメンタリーというジャンルが成立したことに端的に現れています。しかし、映像の記録性を素朴に信じることが困難になった現在、ドキュメンタリーは、かつてのようにひとつのジャンルであることをやめ、より多面的で複雑なものになってきています。写真や映画、あるいは現代美術などの諸領域を横断し、政治と美学、現実と表象、真実と虚構といった二元論を積極的に交差させ撹乱する昨今のドキュメンタリー的実践。その傾向は、アーカイヴ形式を援用した作品群の増加という、昨今の潮流と無関係ではないでしょう。

本展の出展作家である小森はるか+瀬尾夏美、佐々木友輔、髙橋耕平は、こうした傾向を自覚的かつ先鋭的に実践しています。映像に加えて、オーラル・ヒストリー、ドローイング、文学作品、楽譜など様々な媒体を複雑に構成することによって、現実的な事象や歴史へのアプローチを試みる彼/彼女たちの作品では、かつてドキュメンタリーが依拠していた対象への窃視的観察という手法やカメラによる現実の客観的描写といった通念は、もはや意味をなさなくなっています。

東日本大震災以後に東北に移住し、被災地の様子を映像やドローイングによって描いてきた小森はるか+瀬尾夏美は、そこで培ってきた技術を「終戦」というテーマに援用した新作を展示します。佐々木友輔は、1910年に長塚節が執筆した長編小説『土』を着想源にして、搖動する手持ちカメラによって場所論を記述しようとする長編作品《土瀝青 asphalt》(2013年)を、髙橋耕平は、観菩提寺の御詠歌「松風」を継承する村人たちを取材した映像作品と唱歌譜によって構成した《となえたてまつる》(2015年)、ならびに、京都のアートウォッチャー「原田さん」の映像と彼が語る半生を綴った年表からなる《HARADA-san》(2013年)を展示します。

彼/彼女たちは、映像の記録性がもはや自明ではなくなったドキュメンタリー以後に、それでもなお、ドキュメンタリー的実践を行おうとしていると言えるでしょう。そこには、出来事や経験を記述するための新たな方法が様々なかたちで内包されているはずです。出展作品を通じて、それぞれの作品の独自性が浮かび上がってくるとともに、今日における〈記述の技術〉の奥行きと広がりが明らかになることでしょう。